日本の小学生は、ほとんどがランドセルを使っています。実は、ランドセルは日本独自の通学カバンなのをご存じでしょうか?その国の通学事情による違いはあるものの、海外ではランドセルではなく、リュックサックなどを自由に選ぶことがほとんどです。
この記事では、海外の通学カバン事情をご紹介するとともに、なぜ日本でランドセルが長く愛されているのかについてもご説明します。
【この記事で分かること】
・ランドセルは日本だけの文化ということが分かる
・世界の子どもたちが使っている通学カバンが分かる
・日本でランドセルが選ばれ続けている理由が分かる
ランドセルは日本だけにある文化
ランドセルは、日本の小学校特有の通学カバンです。
ランドセルの始まりは、明治10年(1877年)、学習院が軍隊で使われていた「背のう」を通学カバンに指定したことでした。当時の背のうは、リュックのような形をしています。今のような箱形のランドセルが登場したのは、明治20年(1887年)のことです。
それから100年以上の時間をかけ、たくさんの人が知恵を絞って、今の形に改良されました。ランドセルは、日本人の器用で勤勉な性格や、より良いものを追及する工夫の精神の結晶ともいえます。
ランドセルの長い歴史や由来は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
海外の子どもたちはどんな通学カバンを使っている?
日本以外のほとんどの国や地域では、ランドセルのような決まった通学カバンがありません。子どもたちは、それぞれの文化や習慣に合わせていろいろなカバンを使っています。いくつかの国の通学カバン事情を見ていきましょう。
台湾
台湾の小学生の通学カバンは、リュックサックが主流です。
幼稚園の頃に使っていたリュックをそのまま使う子もいれば、日本のランドセルを使う子もいるそう。学校の指定はなく、カバンのデザインやブランドは自由に選べます。
一部の地域では、入学にあわせて市長が通学用リュックをプレゼントする取り組みも行われています。
ドイツ
ドイツの小学生は、「シュールランツェン(Schulranzen)」と呼ばれる学校用のリュックを使います。丈夫な作りで、暗い道でも目立つように反射材が付いているのが特徴です。いろいろな種類が売られていて、子どもの成長に合わせて肩ひもの長さを調節できるものや、腰ベルト付きで安定感のあるタイプも。
ただ、日本のランドセルのように卒業まで使い続けるものではなく、高学年になると普通のリュックに変える子も多いようです。
中国
中国の小学生もリュックで通学するのが一般的です。ただ中国では、学校に自分専用のロッカーがなく、あっても小さいことが多いといった事情から、荷物をいつも自分で持ち歩く必要があります。通学カバンも、辞書やドリルなどの教材で重たくなりがちに。
だから重さ対策として、キャスター付きのカバンを使う子もたくさんいます。特に都会では、キャリーを引いて登校する子どもたちの姿が多く見られます。
アメリカ
アメリカでも、小学生の通学カバンはリュック(バックパック)が主流です。指定のカバンがないので、キャラクターがプリントされたものやブランド品など、お子さまの好みでいろいろなリュックが選ばれています。
必要な容量は、学校によって違いがあります。紙ではなくデジタルの教科書を採用している場合や、教材を置きっぱなしにする学校などでは、大きなリュックが必要ないことも。
ブラジル
ブラジルでは、キャスター付きの小さなスーツケース(モッシーラ・コン・ホジーニャ)が人気です。小学生に人気のキャラクターが描かれたデザインのカバンもたくさん売られています。
公立の学校ではリュックサックが配られることもありますが、使っている子は少ないそう。キャスター付きを選ぶ子が多いのは、学校で使う教科書やノートは毎日持ち帰らなければならず、さらに一冊一冊の厚みがあって重いものが多いため。車やバスで送り迎えをしてもらう子が多く、カバン自体の重さを気にする必要がないのも理由のひとつです。
フランス
フランスでは「カターブル(Cartable)」と呼ばれる横長の通学カバンが使われています。背負うタイプが人気ですが、なかにはキャスター付きのカターブルもあるそう。
サイズがある程度決まっていて、デザインや色で自分らしさを楽しむところは日本のランドセルと似ています。ただ、卒業まで使い続けるわけではなく、高学年になると劣化したり容量が足りなくなったりして買い替えるケースが多いようです。
オーストラリア
オーストラリアでも、通学はリュックが主流です。学校によっては指定のリュックがあり、制服と揃いで購入します。
オーストラリアでは、自分専用のロッカーや荷物の置き場所を持てる学校もあるほか、教科書も多くの学校がデジタル式です。持ち歩く荷物は、日本に比べると少ない傾向にあります。
日本でランドセルを選ぶ家庭が多い理由
日本のランドセルは、海外の通学カバンと比べると特別な存在です。それでも多くの家庭がランドセルを選ぶのは、子どもへの負担の少なさや使いやすさ、丈夫さなど、ランドセルにしかないメリットがたくさんあるから。
例えば、荷物の重さを分散して肩全体で支えることで、重い荷物を背負って歩いても疲れにくくなっています。6年間ほとんど毎日使っても壊れないくらい、丈夫にできているのもランドセルならでは。交通事故防止のための反射材や、けがをしづらい丸みのある金具など、子どもの安全も考え抜かれています。
ランドセルは、小学生が安全で快適に通学できるよう、たくさんの工夫が詰め込まれたカバンなんです。ランドセルが選ばれている理由は、こちらの記事で詳しくお話しています。
まとめ
海外の子どもたちは、リュックサックやキャリーケースなど、さまざまな通学カバンを使っています。ほとんど全員が同じ形のカバンを卒業まで使い続けるという日本のランドセル文化は、世界的にはめずらしいかもしれません。
それでも100年以上ランドセル文化が続いてきたのは、ご両親とランドセルメーカーが、子どもにとって負担が少なく、使いやすく、そして丈夫で安全なカバンを追求してきた結果です。
お子さまのためのランドセルを選ぶときは、ぜひこうした工夫にも注目してみてくださいね。